あたしが幸せゆえにニヤニヤとしていたら、翼はしょうがないなというふうに笑って自分のスクールバッグを背負った。
「じゃ、お邪魔みてぇだし帰るわ」
そして軽くあたしに手を振って教室を出ようとした翼に、
「おい」
藤岡くんが声をかけた。
いぶかしげな顔で翼は振り返る。
藤岡くんは自分のケータイを翼に見せて、興味なさげに言った。
「生徒会室で待ってるよ、だと」
「……誰が」
「アイツ以外にいねぇだろ」
……放課後に翼を待ってるひとなんて、右京さんしかいないと思う。
一緒に帰るのかな、とあたしはなんだか嬉しくなったんけど。
「……誰が行くか馬鹿野郎」
翼は心底嫌そうな表情で憎らしげにそうつぶやいて、教室を出て行ってしまった。