「んー、突然やけど。
……ちょっと昔話してええ?」
そして、どこか懐かしむような瞳であたしを見つめた。
コク、とあたしはうなずく。
「……俺、昔めっちゃ好きだったコがいてなー。
初恋やったから、もう笑えるくらいはりきってもーて。自分だけのものにしたくて仕方なかってん」
その頃を思い出しているんだろうな。
過去の自分を笑うみたいに櫂さんは楽しそうに話す。
「……どんなひとだったんですか?」
「めーっちゃかわええコ。
まっすぐで、優しい心持ってて。
笑顔がほんまにキレイでなー。
そういうトコが好きやった」
でも、細められる瞳はどこか恥ずかしそうで。
櫂さんは本当に、真剣に、そのひとが好きだったんだなって思った。