――それは、朝のSHRの前だった。
めずらしく、あたしより早く登校してきていた藤岡くんにこう言われた。
「今日来るヤツには近づくな」
と、非常に不機嫌な表情でイヤそうに。
当然あたしはわけがわからなかったけど、とりあえず頷いて聞いてみた。
「えと……今日来るヤツって、だれ?」
「……オマエのよく知ってるヤツ」
「……え? あたしの知り合い?」
「カンタンに言えば転入生だっつの」
ああ、転入生。
そのひとが、あたしの知り合いなんだけど……近づくなってこと?
「……んー?」
そうしてあたしが首をかしげていると、チャイムが鳴って、担任の先生が来てしまった。
藤岡くんはもうなにも話す気がないようで、まったくこっちを見ない。
近づくなってどういうこと?
……ま、転入生の姿を拝見してから考えよう……。