単純なあたしはそれだけで彼に心奪われてしまったんだろう。
好きだと自覚するのに時間はかからなかった。
少しずつ話しかけて、確実に仲良くなっていった。
彼は意外にもよく話したし、これまた意外にもよく笑った。
そんなトコロも知るたびに想いはつのっていったんだ。
けど。
最後まで、「好き」は言えなかった。
卒業式の日、呼び出しはしたんだけど
初めての告白の緊張と、離れてしまう悲しさで泣いているだけで何も言えなかった。
でも、そんなあたしに彼は笑いながら
「ずっと会えねーわけじゃねーんだし。泣くなっつの、絢」
なんて言って、自分よりずっと低いあたしのおでこにキスをしてくれた。
その言葉にあたしはうなずいて、それを確認した彼は安心したみたいに笑って行ってしまった。
最後に見たのは、子供みたいに無邪気な笑顔。