考えるように視線を上にむけて、
「あぁ」ってつぶやいてからあたしを見た。
「あー……別に睨んでは、ねえから。怒ってもねーし。気にすんな」
ぎこちなくそう言って、あたしの頭を拳でゴンゴンってたたく。
「え……あ、う、うん」
よくわからなかったけど返事を返す。
藤岡くんを横目で見上げると、目があった。
「……」
会話がとぎれて。
同時に藤岡くんの頭をたたく手が止まって、
拳はゆるめられて、
自由になったやわらかい指先が輪郭をすべっていく。
アゴのあたりまで行ったら、動きは止まった。
しばらくそのままでいると、藤岡くんは呆れたようにため息をついて、
あたしの目の前に移動した。