「じゃあもうすぐ始まるから、またね絢ちゃん。翼ちゃんもー」
「おう、さっさと帰れ。そして二度と来るな」
「また来るねー」
最後までにこやかに笑いながら、右京さんは自分の教室に帰っていった。
――そして結局追いかけることもできないまま、チャイムが鳴ってしまう。
そうしてHRが終わって、授業が始まろうとしても、もちろん藤岡くんは帰ってこない。
あたしは派手に倒れた机をもとに戻して、ため息をついた。
……右京さんのせいだー。
授業が終わったら文句を言いに行こうとも思ったけど
「……や、むり」
結局あの笑顔と上手い言葉に勝てないだろうから、やめた。
そうして頭のなかが藤岡くんだらけのまま、大キライな数学の授業を受けた。