あたしが眉をさげると、右京さんはまたニコニコ笑う。
その微笑みこそが右京さんが『王子サマ』と称されるゆえんでありまして。
あちらこちらで「キャーッ」と声があがった。
それをまた笑顔で受け取り、手を振る右京さん。
あたしは脱力。
「……もういいです。翼と戯れててくださいー」
ぐいぐいと背中を押すと、
「冗談冗談。大丈夫だって、怒ってるとして絢ちゃんにじゃないし」
右京さんは首だけ後ろに向けて、あたしに不適な笑みを見せる。
そして、背中にあるあたしの手を掴んだ。
「それに、ほら」
クルッと体をこっちに向け、掴んだままのあたしの手を引っ張る。
「こーやって、他の男が近づくとさ……」
すると必然的に近くなった距離。
いつもより低めの声で右京さんがささやいた、その瞬間。