「言い訳だってとってくれても構わないんだけどさ…」
フワッと力無く笑う悠翔があまりにも儚い。

あたしはゆっくりと悠翔の頬に手を伸ばした

「陽?」

『そんな悲しい顔しないで』

「何言ってんだよ…」
そう言いながらあたしの手を自分の頬に引き寄せる。



「俺…陽を初めて見たのは本当は中学1年の時だったんだ。部活で悩んでた時だった…友達のねぇちゃんの試合観戦の付き添い行ったんだ。そしたら相手が華南で陽を見てさ“俺もバスケやりてぇ” 思って始めたんだ。ちなみにその友達は、准」

『そうだったんだ』

「だから…高校で会った時はマジでビックリした。憧れてた人が居るんだもんな? 心臓止まるかと思ったよ…」

そう言いながら嬉しそうに笑う

「親父が華南の女子の監督だろ? 陽のこと聞きたくても親父のこと嫌いだから話すこともなくて…母さんにもただ“憧れてた人が入った”って話してただけだった。母さんも陽のこと男だと思ってたみたいだしな…」

『うん』

「そしたら…俺が陽にキスした3日前に親父が珍しく声かけてきたんだ。“田崎は元気か?”“母さんの前で田崎の名前を出すなよ”って言われた」

悠翔はあたしの手を痛いくらいに握りしめる。

「理由聞いたら…陽が母さんの子だって言われた。俺、信じれなくて…悪いって思ったけど母さんに探り入れたんだ。“ハルってヤツがさ”って…そうしたら母さんが真っ先に“ハルって女の子? 男の子? ”って聞くから“女だよ”って言ったら真剣な顔で“名字は?”って聞いてきた…今までそんなこと聞かなかったのに」

『……』

「それで確信した。親父から陽の昔の事とか聞かされて、俺が陽を傷付ける事になるって思った。陽に嫌われるのが恐くて……だったらいっそ俺が壊してやろう、って… 一瞬でも陽を俺の物にしたかったんだ」

力なく笑う目の下にはうっすらと隈があった。