一向に腕の力を緩めないあたしに悠翔は少し困ったように
「は、る? あの…さ」
『…何?』
悠翔に離れてと言われるのが嫌で腕の力を強めると更に困ったような声を出した。
「ちょっと、離れよ?」
『ヤダ』
泣きそう
「陽が抱き付いてくれるのは嬉しいんだけど…… 男の子の事情があってさ? そ…それに、試合もうすぐ始まっちゃうしっ!?」
あたしはゆっくりと離れて目線だけ上にあげる。
『試合… わかった』
「…」
『悠翔?』
「他の男の前でその顔しちゃダメだよ」
『は?』
「とにかく駄目!」
『う、うん…。ねぇ? 男の子の事情って何?』
「え…。それは、うん…ね?」
『意味分かんない』
「分かんなくていい…試合戻ろ」
『話そらした』
悠翔の横顔を見て…
この笑顔が海に傷付けられる不安を感じながら体育館に向かった。