あたしの両手首を抑えつけて、顔を近付けた。
海との距離はほんの5センチぐらい
身体の全部が海を恐がるように震えて、鳥肌がたち…涙がでる
海は妖しく笑いながら
あたしの涙を唇で拭い、
「どうして僕を好きになってくれないの? こんなに僕は愛してるのに…」
『…や、めて』
「僕が偽物でも家族を陽から奪ったから怒ってるの?…だからなの?」
『離してよ…』
あたしの話なんて聞いていない。
「あれは仕方ないんだよ。だって家族のままじゃ僕達…結婚できない。陽を愛してるからこそ、なんだよ? 分かって…」
『悠翔…助けて』
その無意識にかすかにもれた言葉に海は一瞬にして凍りそうな程の冷たい目であたしを射抜いた。
「――僕が潰してあげるよ」
『え…』
「僕が“悠翔”を二度と立ち直れないように…陽が愛せなくなるくらいに叩き潰してあげる」
張り付けたような笑顔があたしの脳裏に焼き付くのを感じた。