『ゆ、うと?』

「陽……」


――ギュッ


悠翔の香りがあたしを包む。
『ちょっと!? な、何?』

悠翔から離れようと手で押すが、ビクともしない。背は小さいけどやっぱり男の力で…かなうわけもなく
優しく抱きしめられた。


「試合出たいんだろ? 本当はみんなより早く来て自主練してるくせに…大丈夫とか嘘のくそに強がんなよ。作り笑顔、下手くそすぎ…俺の前ではそんなことしないで泣けよ」

『泣かないし…』
絞り出すように言い、唇を噛み締めると

「血が出ちゃうぞ」
と言いながらあたしの唇を優しく親指で撫でた。


…とても愛おしそうに