『もう…大丈夫』
「ごめんな?」
『うん、気にしないで』
少しの沈黙がながれる。
重い雰囲気の中で口を開いたのは悠翔だった…
「……華南と試合した時、母さんと会っただろ? あの日から母さんの様子がおかしくなったんだ」
ゆっくりと話し始める悠翔の言葉を聞き逃してはいけないとは思うのに、
“母さん”
その言葉があたしの胸を締め付けて
“聞きたくない”
と心が叫ぶ。
「最初はさ…頻繁にボーっとしてただけだったんだ。しばらくして急に泣き出すようになった……“陽、ごめんなさい”って叫びながら」
『え…?』
「陽が海のところに行ったところぐらいから母さんは無気力になった……1日中、涙を流しながら窓の外を見てるだけ」
『……』
あたしは手を握りしめ
震えながら悠翔の言葉を聞いていた。