『この部屋、自由に使っていいから』


要はそう言ってドアを開ける。

そこには10畳ほどの部屋に机とベットとテレビだけが置かれているシンプルな作りの部屋があった。



『なんか困ったことがあったらコイツに言ってくれればいいから』

そう言って要が手を置いたのはさっきの車の運転手さん。

瑞季さんと同じような格好してるからたぶん、要の執事さん。



『葉山と申します。

遠慮などせず、なんなりとお申し付け下さい』


そう言って丁寧に頭を下げる葉山さん。

執事さんはみんな同じようなお辞儀をするんだなぁ…なんて考える。



「鬼灯沙羅です。

しばらくお世話になります」


あたしも頭を下げた。


『じゃ、俺は部屋に戻るな。

なんか困ったことがあったらそこの電話で1押せよ。


そしたら俺の部屋に繋がるから』


最後におやすみ、と言った要は奥へと続く廊下を歩いて行った。


ダメだなぁ…あたし。

誰にも迷惑かけずに遊馬家から逃げだそうと思ってたのに。


なのに、こうして要に迷惑かけて。


それに今ごろ芽依もジュウゴも、瑞季さんも。

そして晴弥もあたしのこと探してくれているんだろう。


時計を見るともうすぐ2時だ。


ベットに横になると安心感からか急に眠気が襲ってきて。

あたしは部屋着に着替えることもなく、そのまま眠ってしまった。