「ねぇ…あたし、遊馬家には帰りたくない」


『ん。知ってる』


「だから晴弥には言わないで。

沙羅が見つかった、って」


もしかしたら要は怒るかもしれない。


みんなが心配してるのに連絡しないのは無理に決まってるだろ、って。

でも、要が言った言葉はあたしの予想を反するものだった。



『最初から言う気なんてない。

沙羅の中で気持ちの整理がつけられてない状態で遊馬んところ帰してもまた同じこと繰り返すに決まってる。


だから気持ちの整理ができるまでうちにいればいい』



「……ありがとう、要」


やっぱり、要は最高の親友だ。

何も話していないのに全部、感じ取ってくれた。



『何があったかは、話したくなったとき話してくれればいいから。

話したくないことなら話さなくてもいい。


ただ、俺は友達としてお前の泣き顔は見たくないんだ。

沙羅は笑ってる顔が1番似合うんだから』


要の大きな手が頭の上にのった。


不覚にも泣きそうになって、なんとか堪える。

泣かないって決めたんだもん。


だからもう、泣かない。

弱い自分にもう未練はない。


あたしは、強くなる。

強くなるんだ。