「忘れてたらそれはそれで問題だよね。まだ二十一歳なんだから。それってチホーショーでしょ」


 理有の細い手首にはサイズが合っていない時計が、肘のほうへと落ちた。


「皆とはまだでしょう? 久々に津久美の市街まで出ようよ」


 申し合わせたように二人同時に歩みを止める。あわせたままの手の平を一度離し、勢いをつけて打ち合わせる。心地いい音が鳴った。


「おぉ。そういえばそうだね! いやぁ、私なんかの為に悪いなぁ」


 一旦止めた歩みを再開。二人してくすくすと笑いあう。


「愛しのみゃーこの為なら、幾らでも一肌脱いじゃうよ」


 そう言う理有に、心の中で最大限の感謝を。当人は言わないだろうけども、私を誘ったのは元気付ける為に違いないのだから。