不意に理有に腕を引かれた。


「たぶん、こっち」


 走り出す理有につられる様に、私も駆け出す。

 小柄な身体ながら、その速度は速い。

 共にひと言も話さないまま、街灯もない路地裏へと侵入する。

 明かりひとつない中、揺れる銀色が二つ。

 目を凝らすと、銀色の向こうに人影らしきものが見えた。


「ねーちゃん……?」


 無事だった、と胸をなでおろすが、安堵は再び焦燥へと変わる。

 弟の腕、白いシャツは赤黒く染まっている。

 意識はある。大丈夫、おちつけ京。

 暗闇に目が慣れてくる。