「みゃーこ、どうしたの?」


 心配そうに私の顔を覗き込む理有。きっと私の顔は蒼白になっているに違いない。

 嫌な予感がする。

 ただの大道芸人のパフォーマンス、酔っ払いの奇声、そんな楽観視をできない違和感。

 続いて聞こえた悲鳴が、その違和感を確証に変えた。

 その悲鳴は、確かに「ねーちゃん」と、そう聞こえたのだ。


「みゃーこ、今の」


 何が起きているかはわからない。しかし、確かに今の声は弟のものだ。

 私を呼ぶような、それも切羽詰った何かが起きているのは間違いないのである。

 辺りを見回しても、弟の姿は見当たらない。

 さほど人がいるわけでない場所なのに。