薫が指さす先には1年生のチームの中

先輩達にも拓海くんにも負けないくらい一際目立つ男の子がいた



一ノ瀬だった




「あ‥ほんとだ‥」


「一ノ瀬もバスケ部だったんだねー」




そのとき拓海くんにボールが渡った


1年生たちが一斉にゴールへと向かう


それを追いかける上級生チーム


拓海くんが囲まれそうになった瞬間



拓海くんから一ノ瀬にボールがパスされた







スローモーションビデオを見ているようだった‥





一ノ瀬は上級生達のディフェンスをするりと交わし


ゴールよりはまだ遠い場所で立ち止まりジャンプした







その瞬間




一ノ瀬の手からボールが離れ 


ゴールに向かって綺麗な弧を描いた






あたしは‥息をのんだ



身動きができなかった







一瞬



‥時間が止まったのかと思った