「うまく言えないが

 沢山誰かを愛したい」



 そう言ったのはわたしの好きな人。
 わたしは日々彼に愛されることを願ってやまないのに
 彼が愛したいのはどこか別の人で
 絶対にわたしではないの。

 それくらいわかっている。

 わたしはわたしを知っている。



 
 でも彼の言葉は重い。
 ずしりとくる。
 思うに彼の言う愛は。
 恋愛に限らないと思う。
 もちろん恋愛かもしれないけれど
 それ以上のものかもしれないと思う。

 そしてそこにはやはりわたしはいないのだ

 わたしはわたしをわかっている。




 夢を見たのはずっと昔。
 夢見ることに疲れ果てて
 今はもう目が覚めている。
 彼に。
 愛されないと知っている。
 わたしはそんなつまらない。
 この上なく覚めた女。