———200●年、9月————







窓際の一番後ろが俺の席。

外からのひんやりとした風が頬をくすぐる。



夏が終わった。






『よーしーひーとー。』



『………あ?』



『古文の訳みせてん!』




『ほらよ、つーかたまには自分でやれよ琢磨。』



『サンキュー!』





俺は今、●岡第一高で二年目の秋を迎えている。


今俺のノートを奪い取って行ったのは、クラスメートの琢磨だ。

意識して人を遠ざけている俺の冷淡な態度を無視してづかづか領域に入ってくるのは琢磨だけだった。


最初はうっとうしかったが、今では近くにいることが自然になっている。


琢磨の芸術的な髪型を見ながらそんな事を実感していると、教室の扉が音を立てて勢い良く開いた。




『あーやべっもう来ちまったよフミちゃんっ。』




一人の女教師が入ってくる。