ここにきて、目を閉じると

お前の声が聞こえる気がする。




風がふけば

お前に触れられている気がする。




思わず名前を呼んで

手をとろうとする。




瞬間、


幻をすりぬけ、


自分の冷たい手が頬に触れる。




目をあけると、あの笑顔にそっくりな

あったかい色をした空が広がる。




何か熱いものが溢れてくる。




(ちくしょぅ、またやっちまった。)

俺は屋上の管理の仕事だけこなせばいいのに、

つい長居してしまう。





* * * *





…ガチャッ…キィ……



鍵をしめたはずのドアから、一人の女生徒が現れた。

女にしては高いほうの背丈、すらっとした手足、ストレートの長い黒髪…あの子だ。



初めて見た時から、何か心にひっかかっていた。
香坂 麗。



『……!せんせ……?』



理由が今、わかった。



『…ご…ごめんなさい!』




綺麗な物全てに引き込まれてしまいそうな瞳、
そしてまるで自分をその対象と正反対だと思っているような、影、

俺は見たことがある。




『待て!』