眉間にしわを寄せながら、
人気のなくなった階段を下りていく。
ざわつく胸にさえも何だか苛々する。
(・・教室でちゃったけど、どうしよう。
まだバイト行くにはちょっと早いなぁ。)
私のバイト先は個人経営の小さな居酒屋だ。
焼き鳥が安くて美味しいのが売りらしい。
図書館にでも寄って行こう、
そう思ってポケットに手を突っ込んだ。
—チャリッ
何かが手に当たる。
『・・・・・あ。』
朝拾った鍵だった。
高瀬先生に言い忘れてしまったのが、なんだか非常に悔やまれた。
それにしても、これはどこの鍵なんだろう。
(倉庫とか・・?
うーん、あけちゃいけない場所の鍵だったりして。)
微かな冒険心に駆られ、ひらめいた。
私は別の棟の重いドアを開け、そこにある階段を上りだした。
2階・・3階・・4階・・
目的地にむかって走るのは、
ちょっと爽快だ。
しかし階を重ねるとさすがに息が切れてくる。
4階から上に行こうとするところに貼り紙がある。
”この先屋上。生徒立ち入り禁止!”
そう、屋上。
屋上には皆が出たがっていたが、鍵は教師が厳重に管理していたので諦めるしかなかった。
でも、この鍵がもしそうなら、これは初の快挙だ。
あたりを見回して、そっと足を運んでいく。
足元が埃やゴミで汚れていくが、そんなことはおかまいなしだ。
扉の前まで荒くなった呼吸を整える。
鍵を差し込み、ゆっくりまわす。
正解をつげる音がすると、
自然と顔がほころんだ。