『‥‥っ。あったま痛‥。』
辺りを見渡すと、床では高瀬が寝息を立てていた。
しっかりと私の手を握ったまま。
彼の側の灰皿には吸い殻がこんもりとあって、あれから一人で起きていたであろう時間を匂わせた。
キッチンには、いつか料理に使ったらしき包丁が置かれている。
『‥‥‥‥‥。』
目覚めた時、つないだ手と、私の腕から先が切り離れていたら、彼はどんな顔をするかしら。
そんな事を考えながら、そっとベッドを下りようとすると、急に手に力がこめられた。
手の先に視線を向けると、彼が同じ姿勢のまま、しっかりと目をあけてこちらを見つめていた。