* *


放課後、コンタクトがとれてしまったのでトイレに駆け込んだ。


『…あ゛!』

せっかく洗ったのにまた落としてしまった。


しゃがんで探すがよく見えない。



『レイちゃん探してるのってこれ?』

誰かが拾ってくれた。

『あ…ありがとう。』


視界はぼやけていたが、ウェーブの二つ結びの髪型と、ぱっちりした大きな目で、
それがカナだとわかった。

私は咄嗟に作り笑いを引っ込めた。


そしてコンタクトを再トライ。

カナは隣の鏡で化粧直しを始めた。

少しの沈黙が流れた後、
カナはビューラーでまつ毛を上げながら口を開いた。


『レイちゃん聞いていい?』


『………何?』


カナと話すのは、アドレス交換の日以来だ。


『ねっ亮ちゃんと付き合ってるの?』

彼女の目は好奇心で輝いている。

亮ちゃん…亮太の事だ。

この質問はクラスの女子全員から受けたから、
いい加減うんざりだった。


『ただの幼なじみ。小学校から。』



私はなるべくすまして答える。


ひんやりとした罪悪感がちくりと胸を刺す。




『そーなんだーっ仲いいから、もしかしてって思っちゃった、ごめんねっへへ。』


私の態度に気付かないフリをして、明るく振る舞うカナ。