『あーでもよかった・・。』
久しぶりに乗る高瀬の車の中で、私は放心状態でつぶやいた。
『・・・手遅れにならなくてよかったな。』
『うん・・・。
ねぇあの2人結婚するのかな。』
『そうだな、1年くらい、あいつらならすぐ乗り越えるだろ。それに、』
『それに?』
『あいつ、面会いくって。西崎の父親に、あんたの娘もらいますって。』
『わぉ。かっこいー。』
『でも宮崎か・・。』
『遠いー・・。』
『位置わかんの?』
『ちょ、馬鹿にしないでよ。』
『で?「また一人になっちゃう」とか、思ってるわけだ。』
『う。・・・・・・。いや』
一瞬図星をつかれた気分になったけど、違うことに気づいた。
『・・なんだろう、違うよ・・あの子が与えてくれたものは、そんな、離れたらすぐに消えちゃうようなものじゃない・・と思う。』
私が言葉を探しながらそう言うと、彼は静かに微笑んだ。
そして、躊躇うことなくタバコに火を付けた。
私がそれを凝視していると、彼は「窓、開けて」と、当然のように指示した。
その通りにすると、冷たい風がほてった頬を包んだ。
街中が、キラキラと光をちらつかせてクリスマスを待っている。
本物の星達を追いやって、ただ無神経に・・といいたいところだが、
不覚にもそれらに癒されている自分も見つけてしまった。
求めすぎなければ、
人ってそんなに悪くない
生きるのは苦ばかりじゃない
そんなガラにもないことを思って、目をつぶった。
自分の長い髪が顔をくすぐるのが心地よかった。