足達はそそくさと逃げるように教室を後にした。

「さっさと掃除して帰るべ」

帰り支度をしている俺に町田が箒を投げてきた。

「俺当番じゃないし、待っててやるから早くしろよー」

今度は俺が箒を投げる。
ふてくされながら町田は掃除を始める。
ベランダに出ると生ぬるい風が体を通っていく。
手すりに体をあずけ校庭を眺めていると、職員通用口から私服の人間が出てきた。

「先生にしては若いよな、もしかしてあれが例の転校生?」

数歩後ろから網代先生が歩いてきた。

「やっぱ転校生だ。あっ」

転校生が振り返り俺のいるベランダを見る。
思わずしゃがんでしまった。

ずっと見てたから気づかれたかな?
おそるおそる覗くと、まだ転校生は俺を見ていた。


ドクン―

胸が高鳴る。

「ハル」

心の中で名前を呼んだ。