君がいるから、今の紀琉はこうやって生きてる。

君がいなかったら、今の紀琉はここにはいないのかもしれない。

この残酷な世界から一刻も早く逃げ出そうとしている君を、無理やり引き止める必要も何もないと思っていた。

けれど、あの日。

雨に濡れながら、傷に痛めつけられながら、君の為に走る紀琉を見て…君には生きていてもらわないといけないと感じた。

逃げ出すことを終わりとしない人の軌跡を、その願いに託して…俺は話そう。

璃雨は目を泳がせながら、激しく迷っていた。

この男は自分が紀琉の幼なじみだと言っているが、実際そうという証拠もなにもない。

果たして西山日向を信じていいものか。

そして、出された条件に従うべきなのか。

璃雨は死ぬ。

それは自分自身が出した答えだから、迷いはない。