でも、いつのまにか紀琉は璃雨にとってどうでもいい存在ではなくなっていた。
いや。

契約という関係をいつも気にしていた時点で、璃雨にとって紀琉は"何か"だったんだ。

いなくなれば気になる存在。
笑ってくれれば嬉しくなる存在。

璃雨が紀琉の生きてきた道順に入っているのだとすれば、知る必要はあるのかもしれない。

西山日向は迷う璃雨を見て、悲しげに笑ったのを、璃雨は見逃してしまった。

西山日向がこの時どういう気持ちで璃雨と接していたのかも、璃雨は知る由もなかった。

西山日向は、少し前屈みにしゃがみ、璃雨の頭をくしゃくしゃに撫でた。

重なり瞳。

まるで小さな子供をあやすような手つきは、どこか優しさを帯びているような気がした。

クスリと笑う。

「璃雨ちゃんがさ、紀琉の真実を知りたいって言うなら教えてあげる。」

…真実……。

それは璃雨も関わっていること?

「…その変わり、条件がある。」