「……また、目開けたまま」
ふわふわした感覚のなかで意識をとばしていたあたしは、ぼんやりと彼の顔を見つめたまま唇を重ねていた。
ゆっくりと離れて、彼が指摘する。
「俺はちゃんと閉じてるんだからちゃんと閉じろよ――恥ずかしいじゃん」
キスをするとき、あたしはいつも目を閉じるのを忘れる。
それは、彼が目を閉じるまでのゆっくりした動きに見とれているから。
彼のみたことない表情を目に焼き付けておきたいと思うから。
緊張して、目を閉じるなんて当たり前のことすら考える余裕がないから。
「あ、ごめん。あたしいつも忘れちゃって」
いつも彼に言われてから気付く。