「なに、そのうれしそうな顔――かわいい」


彼の大きな手があたしの後頭部におかれ、ゆっくりと引き寄せられる。


あたしは彼のものからそっと手を離し、彼の背中に手を回す。



彼の顔が近づいてきて触れるまでの数秒間、あたしはいつも緊張する。



だって彼の綺麗な顔がこんなにも近い。

だって目を伏せる彼の表情は普段と違う。

だってどうすればいいかわからなくなる。



キスは練習したことがないから、わからない。それ以上のことは何度も練習したけど、キスは特別。彼としかしたくない。


それ以上のことならデキルあたしは、きっとおかしい。


絶対、おかしい。たぶん。