琴音が言うべきか言わぬべきか悩んでいると、校内放送のチャイムが鳴る。

風紀委員より呼び出します。
一年二組、鵜月琴音さん。
至急生徒会室へ来てください。

なんだか聞いている方が気の抜けるような、やる気のない声。

なんかやらかしたのか、というクラス中の好奇の視線を浴びて琴音は教室を出た。

――遅刻、だよね……

力なく廊下を歩く、溜め息が止まらなかった。


琴音が生徒会室の扉を遠慮がちに叩くと、どーぞ、とさっきの放送と同じやる気のない声。

「失礼しまーす」

そっと扉を開けて中を覗く。

コの字型に並んだ机にはそれぞれ委員会名の書いたプレートが並んでいる。

正面を見れば、大きな窓を背に「生徒会長」のプレート。

その席に座っていたのは速水ではなかった。