カメラを琴音に向けたまま、にっこり笑う男。

「いや、どうも、はじめまして。 一年の鵜月琴音ちゃん、だよね?」

やたらご機嫌に話しかけながら、再びカメラのシャッターを切る。

「そうですけど……なんですか、これ」

目の前でフラッシュをたかれ、ちかちかする目を押さえて琴音がたずねる。

「や、申し遅れました。 俺は金井淳(かねい あつし)。
 二年の広報委員長です」

カメラをさげて、今度はやけに丁寧な一礼。

続けて金井はさっと右手を差し出して琴音に微笑みかけた。

「そういうわけで、よろしく、秘書さん」

行き成り手を差し出されても、相手は二年。

オマケにギャラリーの多い廊下で生徒会役員の手を握るなんていうことが琴音に出来るはずもなく、黙ったまま突っ立っていた。

「あらら、残念、嫌われちゃった? どうする?」

残念、なんて言いながらも笑顔は崩さずに金井は後ろを振り返る。