扉を開けると同時に舞い込むのは、埃とカビの混ざったような、なんともいえない湿っぽい匂いと空気。
人通りの多い廊下とは対照的に、人の気配すらない図書室。
締め切ったカーテンの隙間から差し込む、わずかな陽だまりでは埃が舞っているのがよくわかる。
こんなところ、長くいたら病気になりそう。
はやく帰ろう。
部屋の中央にあるテーブルに、持ってきた本を一気に置く。
また、机の上に舞う埃。
琴音は一番上にあった本を手にとると、辺りを見渡した。
ふと、目に留まったのは、本の貸し出しをするカウンター。
そこに突っ伏して寝息をたてる男子生徒が一人。
「……黒崎先輩?」
一瞬疑ったが、体育会系の黒崎がこんなところにいるはずがない。
この学校の人、ホントよく寝るんだな。