がたんっ、と大きな音で琴音は顔を上げた。

肩から何かがぱさり、と軽い音をたてて落ちる。

「……ブレザー」

隣を見ると、慌てて倒れた椅子を直す、カッターシャツ姿の黒崎。

「あ、悪かったな、起こしちまったみたいで」

黒崎は椅子をなおして振り返ると頭をかいた。

「このブレザー、先輩のですか」

「いやぁ、俺が起きたら、お前が寝てるから。
4月だっていうのに夕方はまだ寒いよな。

ま、起きたついでに帰ろうぜ。
もう5時になるし」

琴音からブレザーを受け取り、羽織る。

「まぁ、俺の昼寝に付き合わせちまったし、そこまで送るわ」