「ふふっ....」



さっきまで焦って、
オロオロして、無意味に筆箱の
キーホルダーをいじっていたのに、



咲月はもうそんな素振りの欠片も見せない....



なんで笑ってるの?って聞きたかったけど、
担任の先生が私にちゃんと礼しなさいって
注意を喚起したため、



私は一応黙る。



1時間目が終わり、みんなはまるで
蜘蛛の子を散らすように
わーっと教室から出て行った。



さっきまで私を心配していた子たちも、
好奇心に満ち溢れた目で見ていた子たちも、
そんなことはもうとっくに忘れている、という顔だ。



忘れてた。
今日は月に1回の生徒ホールでの
マジックショーだ。



マジックショーが何故こんなに
人気あるのかは分からないが、
見ていると嫌なことも全て忘れられるし、
私は大好きだった。



いつもは咲月と手を取って
大急ぎで前の列の席をキープするのに....



「朋子は行かないの?」



そう聞く咲月を思いっきり睨んで
私は言った───



「朋子こそ、行かないの?」