暫くし徐々に速度を落とし最終的に緩やかに進むぐらいのスピードになった。
「……た、助かった」
少女がポツリと呟く。
暫く静寂が漂い、近くを小鳥が飛んでいるぐらい穏やかになり、先程の緊迫して騒がしい戦場だったのが嘘みたいだった。
男は少女を開放し立ち上がり辺りを見回す、それにつられて少女も風で揉みくちゃになった髪を手櫛で整えながら立ち上がる。
「あれ?」
見渡せば先程まで暴れていた敵が一人も居なかった。
「何で消えたの?」
丁度隣りにいたキャプテンと呼ばれていた男に訪ねる。
ここに来た時は体が強張り震える程怖かったのに、今では男に対して恐怖を感じなかった、二度も助けてくれたからだろうか。
二回だけしかと言うべきかもしれないが、身を挺してナイフから庇おうと自ら盾になった事が少女にとって恐怖を払拭するには十分だった。