夜も遅く、空には暗い紺色が広がりぽっかりと丸く穴を空けたような満月が丁度天辺から傾き始めた頃、ある街の片隅に少し寂れたバーに入る一人の男性がいた 。


男は闇に溶け込みそうな黒いトレンチコートを羽織り襟は立て帽子を深くかぶっている。

ぎぃぎぃと歩く度に木造の床が音を立て、あちこちで灯るランプで店内は照らされランプの側には何人かの客がそれぞれ固まって話しを楽しみながら酒のグラスを傾けていた。



男性は店の奥にあるバーカウンターに迷わず行き、カウンターに帽子を置いて椅子に腰掛ける。


「お客さん何にする」

グラスを磨いていた顎に少し髭の生えた白いシャツのマスターが無言で座る男性に問いかける。



「ミルク」


その言葉にピクリと眉が動く

「…………他に行きな、ここはバーなんだよ酒しか置いてない」


「なら白い獅子の行方は?」


暫くしてニヤリと口が孤を描き、マスターは背後にズラリと並ぶ酒のボトルの一つを手にしキュポンッとコルクを抜いて中から丸めた紙を取り出す。

「……久しぶりに魔弾の狩りが始まるのか」


紙を男性に渡す、そこには世にも珍しい白銀の髪をした空賊団の頭の顔が書いてあった。




「獣狩りでも始めようかとね」