「今儂らが居る空間があいつの中じゃ」
「訳わかんなくなってきた」
頭を抱えてうずくまる青空を横目におじいちゃんは釣りを続ける。
ファンタジーの漫画や映画の中でしか登場しない幻想の中の生き物の巣、普通の鳥の巣とはだいぶかけ離れすぎている。
「見とれ」
おじいちゃんに言われ顔を上げると丁度釣り糸を巻き上げていた。
「これがおぬしの龍じゃよ」
ちゃぽんと音をたて、澄んだ青い水面を揺らし釣り上げられたのはまん丸の灰色した卵だった。
「これが龍の卵」
どんなおかしな形をした卵が出てくるのかと待っていたら普通の卵だった事に拍子抜けする青空。
「ほい」
「えっ?」
釣れた卵を青空に渡しおじいちゃんは立ち上がる。
「それはおぬしのじゃよ」
「けどおじいちゃんが釣り上げたんじゃ」
「おぬしの為に釣ったんじゃ大切に育てるんじゃよ、じゃあの」
そのたっぷりとした髭を触りながらにこりとし釣り竿を片手におじいちゃんが消えていった、卵について大した説明もせず。