金にはならないが、正直、休みたかった。

今日は常連の客だから来たようなもの。

心底悲しそうな顔をして嘘をついた彼は、女性の頬にそっと手を添える。

「また呼んで。俺、カナコさんに会いたいから」 心を酔わせる程に甘く耳元で囁く彼に女性は欲望を口にする。

「聖…キスして…?」

聖と呼ばれた青年は場を冷めさせないように確認をとる。

「…どこに?」

女性は焦れったいというように聖の首にしなやかに手を回し、踵を上げる。

「意地悪ね、口によ」

それを聞いて聖はそっと真っ赤な唇に自分のを落とす。

そして収入に繋がるキスをしながら、心の中でカウントダウンする。

5・4・3・2・1…

そっと唇を離し彼女を見つめ仕事が終了した事を告げる。

「またね、カナコさん」

優しく微笑む聖に女性は仕方なく手を離し、ブランド物のバッグから同ブランドの財布を取出し無造作に札を掴んだ。

「裸のままで悪いけど」

そう言って数枚の万札を聖に渡す。

「これ、多いよ?」

女性は気の強そうな笑顔を見せる。

「交通費よ」