来た時と同じ格好をして聖は毛布で体を隠しているミスズに近づく。

「幸せに…」

そう言ってミスズにキスをした。

ミスズはそのキスを受け入れて幸せそうに笑った。

そしてハッとしたように聖に告げる。

「お金は必ず持っていって」

それを断ろうとした聖は彼女の強い意志に何も言えなくなる。

封筒を手に取り「またのご利用を」と告げる聖。

感情のままに抱いた事を悟られないように聖はミスズに背中を向けた。

歩きだそうとした聖の手に何かが絡む。

ベッドから飛び起きて肌を出しながらミスズが聖の腕を掴んでいた。

「聖くん、ありがとう!あなたで良かった。上を見たらキリがないけど…それでも私は一番下じゃないと思ってる」

聖はもう一度ミスズにキスをして「幸せに」と囁いた。

今度こそ聖は扉に向かう。

振り向かないと自分に言い聞かす。

ミスズの姿を見ないまま「さよなら」と扉を開けた。

「さようなら」

返ってきたミスズの声が震えていたような気がした。