気は重かったが、自分は仕事で来た事を思い出す。

いつものように確認をとる。

「どこに?」

「…唇に…」

その言葉を待って、聖はゆっくりとミスズの唇に自分のそれを重ねる。

もっと体が強ばるかと思ったが、泣き疲れたせいかミスズは聖に体を預けたままだった。

聖にはキスのカウントが出来ない。

長い長い口付けにミスズは気が遠くなる。

フッと離れた唇にミスズはすぐ目の前にある顔を見つめる。

「もっと深くあなたを慰めたい」

そう言った聖にミスズは戸惑う。

本当は慰めたいわけじゃなかった。

聖はその不幸な女が欲しくなった。

愛しい…そう思った。

「…抱いてもいいですか?」

聖の言葉にミスズは驚く。

「お客は抱かないんじゃないんですか?」

ミスズの言葉に聖は口の端を上げた。

「お金なんていらない」

「同情ですか?」

「あなたがそれで楽になるなら、そうとって下さい」

ミスズはもう何も言えない。

生まれた沈黙に聖は再び唇を重ねた。

慈しむように深くミスズの口を探る。

「…んっ」

舌を絡ませるとさっきのワインの甘さを感じた。