ミスズはベッドに腰をおろす。

どうしようかと悩んだが、聖もミスズの横に腰をおろす。

聖を見ることなくミスズは口を開いた。

「私、来週結婚するんです…」

「…おめでとうございます」

祝いの言葉にミスズは聖に顔を向ける。

「数時間前なら心からありがとうって言えたのに…」

聖はまた悲しそうな顔をしたミスズになんとなく想像がついた。

「さっきの電話の人と結婚するんです」

予想通りの言葉だった。

「彼がこのホテルに泊まるって彼のご両親に聞いて…会いにきたんです。…部屋に行ったら女の人がいました。彼は知らない女の肩を抱きながら、部屋とあなたを私に用意したんです。無造作に封筒にお金を入れて…俺を楽しませてくれる女になれって…」

ミスズの目から再び雫がこぼれ落ちた。

「…私、子供の頃から彼と結婚するって決まってたから、彼しか知らないんです。…愛して、愛されてるって思ってて…結婚式が待ちどおしかった。やっとここまできたのに」

そこまで言ってミスズは大きなため息をついて、そして笑った。

瞳から涙がこぼれる。