「俺を人形だと思えばいい…」

聖の囁きにミスズの体から力がぬける。

抵抗をやめたミスズの髪を聖は彼女を抱き締めたまま優しく撫でる。

「ぬくもりが欲しくて…人形を抱いて泣いた事、あるでしょう?」

ミスズの腕が聖の背中にまわる。

そして小刻みに肩を震わせて嗚咽を洩らしはじめた。

聖の胸が温かく湿っていく。

静かな部屋で聖はミスズの小さな泣き声だけを聞いていた。






ミスズの腕が聖の背中から離れた。

「もう平気…ありがとう」

声はまだ少し震えていたが聖は腕を離す。

体を離しベッドサイドに置いてあるティッシュ数枚を俯くミスズに差し出した。

「ありがとう」とミスズはそれを受け取り、目の辺りを押さえた。

そして顔を上げる。

「ふふ…ひどい顔でしょう?」

そう言って微笑んだミスズに聖は目を細めた。

「いいえ、綺麗ですよ」

お世辞でもなんでもなかった。

素直にそう思った。

聖の言葉にミスズは「上手いわね…」とまた微笑んだ。