聖は空いている手をミスズへとのばす。

そしてミスズの手を握った。

白くやわらかいミスズの手を通して、彼女の体が硬直するのが伝わる。

聖は彼女を見つめながら口を開いた。

「俺はお客は抱きません」

その声が静かに緊迫する部屋に響いた。

『まあ何でもいい。時間までミスズをよろしくな、デリホスくん』

そう言って男は電話を切った。

電話が切れる間際、聖は受話器越しに女の笑い声を聞いた。

相手のいなくなった受話器を耳から離し、聖は元の場所にそれを戻す。

手を握ったまま聖は俯くミスズを覗き込んだ。

今にもこぼれ落ちそうなほど瞳にいっぱいの涙をたたえている。

聖はミスズの手を掴んでいる側の腕を強く引く。

「きゃっ!」と小さな悲鳴とともにミスズのバランスが崩れた。

驚く程に軽く自分の意志のままに倒れこむミスズを聖は胸で受けとめて、両手を彼女の背中にまわした。

すぐに離れようとするミスズを制止するように聖は両手に力を入れる。

そして彼女の柔らかな髪に顔を埋めた。

甘い香が鼻をくすぐる。