聖が言葉を探してるうちに扉がノックされて、先程と同じボーイが手早くあいた食器とワゴンをさげていった。

「ごゆっくりおくつろぎ下さい」

聖はボーイの言葉が嫌味に聞こえる程にあまりの勝手の違いに戸惑っていた。

ミスズは聖をわざと見ないようにホテルのパンフレットを見ていた。

妙な緊張が部屋を占める。

仕事と割り切って聖が口を開こうとした時に、それは鳴った。

ジリリリン…ジリリリン…

大きな音で電話とわかるベルが鳴る。

ミスズの表情が堅くなる。

聖は最新のホテルの割りには古いベルの音に不快感を抱きながら、ミスズが戸惑いがちに受話器をとるのを冷静に眺めていた。

「…はい」

ミスズはそう言った後に眉間にシワをよせた。

それは思った通りの相手からの電話だったのか、思わぬ相手からだったのか聖には判断がつかない。

「はい」と言う沈んだ声の返事しかせぬまま、ミスズは受話器の下を手で押さえて聖に視線を向けた。

「代わって」

その言葉に聖は驚く。