聖はミスズを見つめる。

「白ワイン好きですか?」

その問いにミスズは少しだけ笑顔を見せる。

「ええ、どうして?」

「赤があいそうな料理だけど白がきたから」

聖の言葉にミスズはそっと呟いた。

「覚えていてくれたのね…」

聖はその言葉を聞こえてない振りをした。

「乾杯」

と声を出しミスズが同じ言葉を言うのを待ってグラスに口をつけた。

聖はミスズの発する言葉や態度にいくつかの疑問が浮かんでいた。

しかしそれを尋ねる立場ではないことも重々承知していた。

大金を受け取り、最高の料理を食べ、いつ帰っても構わないという美人を前にして、ひどく憂欝だった。

聖は仕事を全うする為に甘い言葉を囁く。

「ミスズさん、今は俺の事だけ考えて」

ミスズはそのあきらかに営業用の言葉に「そうね」と答え俯いた。






たいした会話もせずに食事が終わる。

ミスズはベッドのそばの電話で食事が終わった旨をフロントに連絡する。

聖はソファーに腰掛けそんなミスズを見ていた。

何か声をかけようにもいつもとあまりにも違って何を言っていいのかわからない。