ボーイは窓辺に立つ聖にチラリと視線を向けたが、すぐに手元のワゴンの行き先に目を向ける。

聖は食事とミスズの暗い表情に訳がわからないまま、ボーイがガラスのテーブルに食事を置いていくのを眺めていた。

二人分あるようだ。

小さなガラスのテーブルは皿を少し置いたらすぐにいっぱいになった。

乗り切らない分はワゴンに置かれたままになってる。

「お食事が終わりましたらフロントにご連絡下さい」

ボーイは丁寧に頭を下げて部屋から出ていった。

悲しそうに下を向いているミスズに聖は声をかける。

「どうしたの？」

その声にミスズは顔を上げる。

「ううん、なんでもないわ。…食事にしましょう」

そう言ってミスズは椅子に腰をかけた。

聖はワゴンの上にワインが冷やしてあるのが目に入る。

「飲みませんか？」

ワインを指で差すとミスズはコクリと頷いた。

水滴を拭きとりコルクを抜いてミスズのグラスに注ぐ。

自分のグラスにも注いで聖は透明な液体を半分ほど湛えたグラスを持ち上げた。

ミスズも慌ててグラスを持つ。