女性の声に聖は返事もせずに従った。

女はレストランのある最上階ではなく、途中の階のボタンを押した女性に、聖は途中で帰されるかな…と予想する。

聖は客と体は重ねない。

自分ではホテルの部屋で5時間も間をもたせる事が出来ないと思った。

まあ、その時は仕方ない…そう思いながら聖は女性の後ろ姿を眺めていた。

髪はダークブラウン、肩までのストレート。

白に淡い色の柄の入った膝たけのワンピースに白いパンプス。

見た感じ腰も足も細い。

服装は今風ではないが、髪質やスタイルの良さは若い気がした。

とするとお嬢様かな…

聖は今回の客をそう評価して、エレベーターが止まるのを待った。

軽いGを体に伝え、エレベーターが目的の階に止まった事を知らせる。

振り向く事もせずに開いた扉から外に出ていく客を聖は慌てて追い掛ける。

赤い絨毯の敷かれた廊下を早足で歩く女性に聖は戸惑いながら後に続く。

途中の一室の扉の前で女性は止まり、カードキーを差し込んだ。

女性は扉を開ける前に左右に首を振る。

人の気配がないことに安心したのか、女性はゆっくりと扉を開けた。