引き抜いた財布から数枚の二つ折りにされた万札を取出し、木村の前に差し出す。

「土日と昨日の分です」

そう言って見下ろす聖の手から、「お預かりします」と木村は椅子から立ち上がる。

紙幣を受け取り折りを直し、再び椅子に腰掛けてキーボードを叩いた。

スケジュールと金額を合わせたのか、「確かに」と聖に伝えて

「聖くんは今日は仕事を入れない予定でしたが、この後どうしますか?」

と続けた。

見上げる木村の視線をそらしながら、「待機室にいるんで、当日があれば入れて下さい」

と答える聖に木村は「わかりました」と頷いた。

それ以上の会話もせずに聖は木村のデスクを通り越し奥の左の扉を目指す。

軽い扉を開けると、そこにはスーツ姿の青年が座っていた。

「…こんちは」

缶ビールを片手に雑誌を読んでいたスーツ姿の青年は、聖の声に反応して顔を上げる。

「お!えっと…聖くんだっけ?お疲れさま」

にこやかに笑う青年に聖は軽く会釈をした。

彼と少し離れたところに腰をおろし、テーブルの上の携帯ゲームに手をのばす。