翌日。

すでに太陽は西に傾こうとしている。

大勢の人に交じって、昨日の青年が大きな交差点を渉っていく。

両耳にイヤフォンをかけ、颯爽と歩く姿は今時の青年そのものだった。

彼は前日までの《今日》を指定してきた仕事は全て断った。

こんな時間に事務所に向かうのは売り上げを持っていく為だった。

待機室で暇を潰しながら、当日の客がいたら仕事をしてもいいかとも思っていた。

仕事がなければ待機していた誰かと食事をして帰ってもいい。

疲れのせいなのか、なんとなく今日は一人でいたくなかった。

大通りを右にそれ、人通りもまばらになった道に立つ雑居ビルに入っていく。

赤い扉の小さなエレベーターに乗り込みボタンを押した。

機械の声が目的の階についた事を知らせる。

けして明るいとはいえない廊下を突き当たりまで進み、緑の重たい扉を開けた。

「こんちは」

一応の挨拶をして中に入ると、目の前のデスクでパソコンのキーボードを打っていた木村が手を止める。

「聖くん、お疲れさま」

笑顔も見せずにそう言った木村に聖はペコリと頭をさげた。

聖はジーンズの後ろのポケットに手を掛ける。